遺言が必要な理由

お子様のいないご夫婦にとって、遺言は必ず必要なものです。

遺言は、「あった方がいい」場合と「なくてはならい」場合がありますが、お子様のいないご夫婦にとって、遺言は「なくてはならない」ものです。

▼目次

  1. 「相続」とは
  2. お子様のいないご夫婦にとって「相続人」とは誰でしょう。
  3. 相続人の「法定相続分」は
  4. お子様のいないご夫婦の、遺言が無い場合の相続が大変な理由
  5. 実際にあった大変な事例
  6. 遺言(遺言公正証書)の大きなチカラ
  7. 遺言の種類と公正証書遺言の長所
  8. 弊事務所がお手伝いさせていただく価値ラ
  9. 遺言は、いつ作ればいい?
  10. 遺言でよくある勘違い

1.「相続」とは

ここで言う「相続」とは、法律で決められている相続人間で相続財産を分配するための手続きのことで、遺言がなければ相続人全員の実印が必要。

お子様のいないご夫婦にとって遺言が「なくてはならない」というお話しの前に、まずは「相続」とは何か、ということについてご説明します。

ここで言う「相続」を簡単に説明すると「どなたかがお亡くなりになった後に、お亡くなりになった方の財産を引き継ぐための手続き」のことです。
遺言がない場合には、戸籍などの書類を集め、法律で定められている相続人の間でその分配について話し合い、相続人全員でいろいろな書類に実印を押して手続きを進めていきます。
基本的には、相続人全員の実印が押してある書類がなければ手続きを進めることはできません。
要するに、相続人全員が分配の割合に納得して書類に実印を押してくれなければ(裁判所へ行く以外)銀行口座の解約一つとっても、手続きが止まってしまいます。

2.お子様のいないご夫婦にとって「相続人」とは誰でしょう。

お子様のいないご夫婦にとっての「相続人」は、
・配偶者+亡くなった方の両親(直系尊属)
または
・配偶者+亡くなった方の兄弟姉妹(甥姪)

では、お子様のいないご夫婦にとっての相続人とは誰のことでしょう。
AさんとBさんご夫妻を例にしてみます。
Aさんに万が一のことがあったとき、誰がAさんの相続人となるでしょう。これは、先ほども書いたように「誰から同意(実印)をもらわなければならいのか」ということです。

まず間違えないでいただきたいことは、ほとんどの場合「相続人はBさんだけ」というわけではない、ということです。

① Aさんのお父様やお母様、おじい様やおばあ様(Bさんから見たら義理の父母、祖父母)などAさんの上の世代の方(「尊属」と言います。)が一人でも生きていらっしゃる場合

①Aさんのお父様やお母様、おじい様やおばあ様(Bさんから見たら義理の父母、祖父母)などAさんの上の世代の方(「尊属」と言います。)が一人でも生きていらっしゃる場合

Aさんの相続人は
配偶者であるBさん と Aさんのお父様やお母様などの「尊属」の方
(上の図の赤い枠の方々がAさんの相続人です。)

注意

「尊属」は、祖父母、曽祖父母と、ご存命な方がいる限りどこまでも上をたどります。

② Aさんのお父様やお母様など上の世代(尊属)の方がいらっしゃらない場合で、Aさんのご兄弟や甥姪がいらっしゃる場合

②Aさんのお父様やお母様など上の世代(尊属)の方がいらっしゃらない場合で、Aさんのご兄弟や甥姪がいらっしゃる場合

Aさんの相続人
 配偶者であるBさん と Aさんの兄弟、甥姪
(上の図の赤い枠の方々がAさんの相続人です。)

注意

甥姪のさらにその下の世代の方は、相続人とはなりません。

3.相続人の「法定相続分」は

法定相続分

配偶者 兄弟姉妹
配偶者と親の場合 3分の2 3分の1
配偶者と兄弟姉妹の場合 4分の3 4分の1

相続人には、法律で決められた「法定相続分」というものがあります。
これは、「このような割合で分けなければならない」と決められたものではありません。
法定相続分は、一つの目安であり、もし相続人の間の話し合いで解決できなかったとき、裁判所でこの割合を基に解決を図ります、という割合です。
したがって、相続人全員の話し合いによって法定相続分以外の割合で分配することになっても、一向に構いません。

そのうえで、法定相続分は、下記のとおりです。

2-①の場合(BさんとAさんの親が相続人である場合)

Bさん(配偶者) 3分の2
Aさんの親(直系の尊属) 3分の1

2-②の場合(BさんとAさんの兄弟や甥姪が相続人である場合)

Bさん 4分の3
Aさんの兄弟・甥姪 4分の1

Aさんの親の3分の1、Aさんの兄弟・甥姪の4分の1は、それが何人いようと親(は二人ですが)全てで3分の1、兄弟・甥姪全てで4分の1です。一人3分の1、一人4分の1ではありません。

法定相続分と混同しやすいものとして「遺留分(いりゅうぶん)」というものがありますが、これは後ほどご説明します。

4.お子様のいないご夫婦の相続が大変な理由

お子様がいないご夫婦に遺言が無い場合
・手続きのために全相続人間で話合いをし、書類に実印を押してもらう必要がある。
・話し合う相手は、遺された方からすれば義理の親族である。

Aさんが天涯孤独な方であれば、相続人はBさんだけですから、話し合いをする必要はありません。誰と相談することなく、Aさんの全ての財産はBさんが引き継ぐことができます。
ただし、AさんにBさん以外の相続人がいた場合には、繰り返しになりますが、その方々と話し合いをしなければなりません。

Bさんからすれば、義理のお父様お母様、義理の兄弟、義理の甥姪と、Aさんの財産について相談しなければならないのです。自分の兄弟や親とは、わけが違います。
少なくとも「Aさんの財産を全て私が引き継ぐために、いくつかの書類に実印を押してください。」とお願いしなければなりません。

大切な方を失い、悲しみとあわただしさの真最中に、義理の親族にそのような話をすることは、例え関係性が良好だったとしても大きなストレスではないでしょうか。

関係性が良ければ、まだ良いのです。

5.実際にあった大変な事例

義理の親族との話合い(遺産分割協議)の結果次第では、配偶者以外の相続人にも財産を分けなければならなくなることもある。これは、今までの関係性や交流の有無に関りがない。

義理の親族との関係性が良ければ、それでもまだ良いのです。
関係性が良いとは言えない場合、そもそも交流がなく、連絡先すら分からないような状態の場合は、大変なストレスとなります。

弊事務所にて以前相続手続きをお手伝いさせていただいたケースで、こんなことがありました。

やはりお子様のいないご夫婦で、「そろそろ遺言を作ろう」と言っていたご主人様が、遺言を作る前にお亡くなりになってしまいました。そこで、弊事務所にて相続手続きのお手伝いをしました。
相続する財産としては、先祖代々受け継いできた不動産というようなものは無く、お二人でコツコツと働いて得たごく普通のご自宅と、その土地。決して多いわけではない金融資産でした。
相続人は、奥様、そしてあまりうまく関係を築くことができなかったために疎遠になっていた義理の甥、2名です。
法定相続分としては、奥様が4分の3、甥が4分の1です。

いろいろな紆余曲折の結果、甥から4分の1の法定相続分を請求され、4分の1相当額を分割で支払うこととなりました。

繰り返しになりますが、その相続財産は、誰に迷惑をかけることもなく特別な贅沢をすることもなく、ご夫婦で一生懸命作ってきた財産です。甥は甥で、法律で決められている以上、不当な要求をしたわけではありませんが、それでも奥様からすれば、今までの関係性や相続の話合いの経過を考えれば受け入れがたいことでした。

私は、その奥様が私の前で流した涙を忘れることができません。

6.遺言(遺言公正証書)の大きなチカラ

公正証書遺言があれば
・他の相続人と分割協議をすることなく手続きを終わらせることができる。
・後から遺留分を請求されたとしても、法定相続割合よりは少ない。
・そもそも兄弟姉妹(甥姪)には遺留分がない。

遺言にはいくつかの種類がありますが、ここでは基本的に公正証書で作る遺言(公正証書遺言)についてお話しします。
「5」の場合の結論から書くと、もしご主人様の「奥様に全ての財産を相続させる」という内容の遺言があったら、義理の甥と話し合うことなく、全ての財産を奥様の名義にすることができました。

公正証書遺言には、こんな力があります。
① 他の相続人と話し合うことなく、遺言に書いてあるとおりに手続きをすることができる。
② 必要書類さえあればすぐに手続きにかかることができる。
③ 手続きが済んだ後、他の相続人から「最低限の取り分(遺留分)」を請求されても、
 「法定相続分」よりは少ない額ですむか、または、その請求さえされない。

① 他の相続人と話し合うことなく、遺言に書いてあるとおりに手続きをすることができる

遺言には、大きな力があります。寄付など、相続人でない人(や団体)に財産を遺すこともできます。法定相続分以外の割合で遺すような遺言であっても有効であり、法定相続分よりも遺言が優先されます。そして、遺言に書かれているとおりに手続きをするにあたり、相続人の間で話し合う(遺産分割協議)必要がありません。
遺言がない場合の相続の手続きで、「相続人全員の話合い」が一番やっかいであることは少なくありません。散々書いてきたように、お子様がいないご夫婦の場合はなおさらですから、「話し合う必要がない」ということだけでも、遺された方にとってはとても大きなことです。

② 必要書類さえあればすぐに手続きにかかることができる。

相続の手続きをするためには、亡くなられた方の生まれた時からお亡くなりになるまでの戸籍を集める必要があるなど、手間と時間がかかります。
公正証書遺言があればこの手間と時間の前に手続きに進むことができます。不動産の名義変更はもとより、銀行の手続きもそれだけ早く終わらせることができ、生活のためにも安心です。

③ 手続きが済んだ後、他の相続人から「最低限の取り分(遺留分)」を請求されても、「法定相続分」よりは少ない額ですむか、または、その請求さえされない。

遺言には、大きな力がありますので、法定相続分に関らず遺言の内容どおりに手続きをすることができますが、一定の相続人には「遺留分」という「遺言でも奪えない相続分」があります。ただし遺留分に関係なく手続きそれ自体は、終わらせることができますので手続きが滞ってしまうことはありません。遺留分は、遺留分を請求したい方から請求されるのを待つだけですので、「話し合いをしなければならない」状況とはわけが違います。
またこの遺留分は、法定相続分より少ない割合となっていますので、請求されたとしても遺言がない場合に比べればダメージも少なくてすみます。

さらに、一番大切なことは、「遺留分がある相続人は誰か」ということです。
遺留分はどの相続人にあるでしょう。
・配偶者        ○ 
・子(孫・ひ孫・・・) ○
・父母(直系尊属)   ○
・兄弟姉妹(甥姪)   ×

大切なのは、兄弟姉妹(甥姪)には遺留分がないということです。もう一度書きます。遺留分は、親にはありますが、兄弟姉妹(甥姪)にはありません。
相続人が、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)である場合には、遺言があれば手続きするにあたり話し合う必要も、後から遺留分を請求されることもないのです。

ちなみに、相続人が配偶者と父母(直系尊属)だった場合の父母(直系尊属)の遺留分の割合は、法定相続分の半分(3分の1×2分の1=6分の1)です。

7.遺言の種類と公正証書遺言の長所

お勧めする遺言は「公正証書遺言」です。
・作る時も法的に確実で安心
・手続きの時にも負担が少ない。
遺言が役に立つのは、遺言者がお亡くなりになった後。万が一不備があった場合、取り返しがつきません。公正証書遺言は、作成時に費用がかかりますが、遺言は「費用が安い」というだけの理由で「賭け」をするべきものではありません。

遺言の種類

遺言にはいくつかの種類がありますが、通常使われるのは2種類です。
① 自分で書く(自筆証書遺言)
② 公正証書で作る(公正証書遺言)

お勧めは、公正証書遺言です。

公正証書遺言をお勧めする理由

① 遺言者が亡くなった後の手続き的な負担が少なく、手続きの時間も早い
② 法律的に不備がない
③ 原本が公証役場に保管され、後々検索も可能
④ 遺言をめぐっての紛争になりにくい

① 遺言者が亡くなった後の手続き的な負担が少なく、手続きの時間も早い

公正証書遺言の場合、いざという時に改めて特別な手続きは必要ありません。家庭裁判所や公証役場で改めて手続きをする必要もなく、そのまま相続財産を引き継ぐための手続きに入ることができます。
ご自分で書いた遺言の場合、まず家庭裁判所で「検認」という手続きをする必要があり、検認を経なければ遺言を使ってその後の手続きをすることができないなど、公正証書遺言に比べて負担や手間が大きくなります。

② 法律的に不備がない

公正証書は、公証役場で作成しますが、公証役場にいる公証人は、少なくとも30年以上の実務経験を積んだ裁判官や検察官等であり、法律的に不備があるということはありません。
ご自分で書く遺言の場合、法律的には「全文、年月日、氏名を自書すること・押印のあること」以外の要件はありませんが、実質的にはかなり厳格で、書かれている内容が法律的に明確でなければなりません。しっかりした情報を得て書けば、基本的には問題ないと思われますが、万が一問題がありその遺言が役に立たなかった場合、取り返しがつきません。

③ 原本が公証役場に保管され、後々検索も可能

公正証書遺言は、原本が公証役場で保管されます。万が一お手元にある公正証書が無くなってしまっても、遺言者本人か相続人であれば再交付することができます。
ご自分で書いた遺言の場合、そもそも発見されないという危険性もあります。

④ 遺言をめぐっての紛争になりにくい

公正証書遺言は、それが遺言者ご本人の明確な意思に基づくものであることを確認したうえで、公証人と証人2名立会のもと作成されます。本当に遺言者の意思だったのか疑いの入る余地は少ないのです。また、公証役場で印刷された遺言書にご署名いただくものですので、本当に本人の自筆であるか、という疑いもあり得ません。

8.弊事務所がお手伝いさせていただく価値

公証役場の窓口は親切ですので質問すれば親切に答え、教えてくれます。遺言を作成するにあたり、遺言者ご自身が直接公証役場へ行き、遺言書を作成することも可能です。
ただし、ご注意いただきたいのは、「公証役場では、基本的には、聞いていないことには答えてくれない。」ということです。これは、公証役場が不親切なのではなく、職務上そういうものなのです。
公正証書遺言は、公証人が「遺言者の口述を筆記する」ものであり、「こういう遺言にしたい」という遺言者の要望を文書化するものです。「法律的におかしい」とか「明らかに内容がおかしい」とか「一般的に起こりやすい問題」などについては教えてくれますが、それぞれのご家族独自の問題についてまでアドバイスすることはできません。

遺言者が「家族にとって必要な遺言」が的確に伝えられていればいいのですが、よくよく話を聞くと、実はもっと違う内容にした方がいい場合や、付け加えておいた方がいい文言がある場合は、決して少なくありません。

弊事務所では、お客様のお話しをとことん聴き、お客様にとって最適である遺言案をご提案します。法的に確実で安心な公正証書遺言ですが、それが内容的にも、より確実で安心になること。それが弊事務所でお手伝いすることの「価値」です。
お子様のいないお夫婦にとっての遺言は、本当に大切なものですので、より確実な遺言を作る必要があります。

9.遺言は、いつ作ればいい?

では、遺言は「いつ」作ればいいでしょう。
これから財産の内容はどんどん変わります。どんな財産が残るのか分かりませんし、そもそもいつ「万が一」があるかなんて誰にも分かりません。

「いつ作ればいいか」の正解はありません。

ありませんが、一つ言えることは「『作った方がいい』と思ったのであれば、すぐに作った方がいい。」ということです。一度遺言を気にしだしたら、その「気になる」は消えることはありません。「遺言を作らなきゃ」そんな小さなストレスは、抱え続けると意外と大きなストレスとなります。
この先、財産がどのように変動するか分かりませんが、通常遺言は、財産がどう変動してもわざわざ作り直さなくても通用するように作成します。ですから、どんなにお若くても人間である以上「今」作成することをお勧めします。

弊事務所でお手伝いさせて頂く場合には、お客様の中であまり深く考える前にご相談にお越しください。あまり多くお考えになっても、ご相談の結果内容が変わることも少なくないからです。
弊事務所に初回相談でお越しいただくにあたり、必要なものは「遺言を作成したい」というお気持ちだけで結構です。

10.遺言でよくある勘違い

遺言に書いた財産は、そのまま遺さなければなりませんか。
いいえ。
財産の内容は、どんどん変わっていくのが当たり前です。もし遺言に書いた財産が遺っていなければ、ないものに関しては手続きできない、というだけのことです。
例えば現在のご自宅が遺言の中に記載されていても、その不動産を売って買い換えているかもしれません。それでも問題ないように、遺言は作成します。
夫婦で一緒の紙に遺言を書くことはできますか。
いいえ。
公正証書で作成する場合も、別々に作成します。ご自分で書く遺言であっても、別々の紙に書いてください。
入院していては、遺言は作れませんか。
「自分の望んでいること」が判断できない状態であれば、難しいですが、「自分がこういう遺言を作りたい」という意思を示すことができれば、可能です。遺言者がどうしても公証役場へ出向くことができない場合には、公証人が出張してくださいます。
遺言がなくてもなんとかなるでしょ。
いいえ。
これは、男性に多い「勘違い」です。ご夫婦の場合、男性は「先に旅立つものだ」という意識であることが多く、「その後」の手続きについて自分事としては考えづらいことが多いようです。しかし、必ずしも男性が先に旅立つと決まっているわけではなく、もしご自分が義理の兄弟姉妹、義理の甥姪と話し合わなければならなくなったら、と考えてみてください。
「なんとかなる」かもしれませんが、適切な遺言があれば、なんとかする必要すらなく手続きできるのです。
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